プロダクトデザイン専門組織が目指すもの

PROFILE

小林 肇

プロダクトデザイン課 課長

2003年にラクス入社。「配配メール」の開発に携わり、その後UIデザイナーのチームを立ち上げる。現在はUIデザイナーが所属するプロダクトデザイン課のマネージャー

今回はプロダクトデザイン課の課長である小林さんに、プロダクトデザイン組織のミッションやビジョン、その実現のために今後目指していくことについてお伺いしたいと思います。

まずは、ミッション・ビジョン・体制を教えていただけますでしょうか。

プロダクトデザイン課は、「プロダクト開発の中心となり、顧客課題を解決する優れたUXを生み出す」というミッションを掲げています。

ビジョンは「日本を代表するBtoB SaaSの優れたUXを生み出すプロフェッショナルチーム」です。

デザインチームは横断組織で、ラクスのほぼ全プロダクトのUI設計を担います。デザイナーはそれぞれ担当サービスを持っており、普段は担当サービスのエンジニアやCS、プロダクトマネージャーと一緒に仕事をしています。

楽楽精算や楽楽明細、楽楽勤怠といった経理や労務の方が使うようなバックオフィス系のサービスのほかに、MailDealerや配配メールといったメール関連のサービスにも関わっています。

最初にプロダクトデザイン課を組織化した背景と思いを聞かせていただけますか?

デザイン組織の立ち上げは2012年です。当時はUIデザイナーは社内に不在でした。新しい画面を作るときは、エンジニアが既存の画面をコピーしたり、切り貼りしながら作っていました。しかしながらユーザーにとってわかりやすく使いやすいUIを作るには、ちゃんと顧客の課題も仕様も理解したデザイナーが最初にUIを考えたほうが、良いUIが出来るのではないかという思いがありました。さらに世の中ではiPhone・iPadが普及し、「UI」「UX」の重要性も高まってきたため、デザイン組織を立ち上げることにしました。

私自身はエンジニア出身で、当時デザインの経験はありませんでした。しかし、顧客課題を解決するための設計・ユーザビリティへの関心は強かったです。その後デザイナーが入社してくれて、UIデザインに徐々に参加することでデザインが向上し、良くなっていく点は非常に楽しかったです。

現在までにさまざまな変遷があったと聞きましたが、どのようなものだったか教えていただけますか?

お客様の業務を深く理解し、デザインで課題解決することを目指してきましたが、いろいろな試行錯誤がありました。

まず、立ち上げ期に最初のUIデザイナーが入社してくれました。デザイナーの不在でも進む開発プロセスの中で、デザイナーがどのように関わっていけるのか、品質貢献できるのかを模索しました。初めは表層の改善から着手しました。

デザイナーが3名くらいに増えると、簡単なUIのルール化ができ、担当するプロダクトも増えてきました。デザインの依頼が次第に増えてきたため、フル稼働で案件をこなしていた時期です。

ここからしばらく苦しい時期が続きました。
一つはUIの改善がなかなか進まなかったことです。機能追加に伴って肥大したCSSを扱えるエンジニアもデザイナーもいなかったことで、ちょっとした修正にも時間がかかる状態でした。

もう一つは出来ることが表層のデザインにとどまり、開発チームからデザインの依頼をもらう社内受託のような状態になっていたことです。開発初期のミーティングにはあまり呼ばれず、設計が決まってからExcelに記載されたUIをきれいにする依頼が多くありました。その理由として、当時はUIデザイナーが仕様や顧客の業務理解が十分ではなかったことがあります。

そこでこの状況を打開するため、二つのことを行いました。
まずフロントエンドエンジニアを初めて採用し、UIデザイナーとフロントエンドの合同チームにしました。
さらには要件定義できるデザイナー組織を目指して、冒頭にお話したミッションを定義しました。

その後、担当プロダクトを絞って出来ることを丁寧にこなしました。新規開発のサービスでは、Vue.jsが選定されたこともあり、デザインしたUIが再現されやすくなりました。Figmaの活用が進み、かつ勉強会をおこなったり、ドメイン知識の習得に時間を割くようになりました。また、今後新しいプロダクトを作る際には、デザインの生産性向上と品質担保のため、標準UIライブラリの策定もおこないました。

現在では1プロダクトに複数名のデザイナーをアサインできる状態になり、デザインの兼務も徐々に減ってきました。再び担当プロダクトも増えました。上流開発の初期の段階からデザイナーがミーティングにアサインされ、開発の背景・課題をエンジニアと一緒に説明を受けて、デザイナーも課題をしっかり理解したうえでUI設計できるようになってきました。複数の新しいプロダクト開発の機会が増え、以前に策定していた標準UIライブラリを活用することができました。

直近ではUIデザイナーもフロントエンドエンジニアも数が増え、それぞれの専門性を活かせる体制が整ってきたため、プロダクトデザイン課とフロントエンド開発課として独立し、現在に至ります。今後も一層お客様のUX向上を目指していきます。

UX向上を目指すとのことですが、顧客業務課題の理解のために組織として現状取り組まれていることを教えてください。

経費精算や領収書・請求書などを扱うプロダクトが多いため、担当デザイナーが簿記学習をしたり、インボイス制度や電子帳簿保存法など顧客が喫緊で対応しなければならない法律についても学習するようになりました。

また、経理の業務を知ることがドメイン理解の取り組みには非常に重要なので、社内の経理の方に相談して、経理業務についてインタビューしたり、実際に業務をされているところを見学させてもらったりしています。

経理に関するもの以外のプロダクトでも、顧客の業務理解は重要です。カスタマーサクセスのチームが顧客のオンボーディングをサポートしており、その動画を細かく観て、顧客が何を目的としてラクスのサービスを契約してくれて、何に困っているのか、操作のどこに詰まっているのかを理解しようとしています。

ありがとうございます。事例の詳細は次回以降にお聞きします!

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