楽楽精算PdMはどのように顧客ニーズを理解しているのか

PROFILE

稲垣剛之

楽楽精算製品管理課

大学卒業後、独立系SIer企業に入社。約10年間、WEB系システム開発・運用のPG、SE、PMを経験し、その後、ファッションECサイトの立ち上げ直後から約9年間、開発責任者として参画。最終的には企画・デザイン・開発といったプロダクト開発全般の責任者を担当。2021年8月ラクスに入社、楽楽精算のPdM組織のマネージャーを務める。

開発組織に所属するプロダクトマネージャー(PdM)と、事業部門の製品企画(PMM)、カスタマーサクセス(CS)、営業は密接に協力して顧客ニーズの理解に取り組んでいます。今回の記事ではその取り組みの一つである顧客調査のフローをご紹介します。

楽楽精算における顧客理解の全体像

お客様からの要望や課題が寄せられる窓口は大きく分けて二つあります。

一つはCSです。ご契約中のお客様や導入準備中のお客様から、運用や導入に関する要望や困りごとの情報が寄せられます。もう一つは営業です。導入を検討されるお客様から、業務課題や検討にあたっての機能要望の情報が寄せられます。これらの情報は日々蓄積されており、貴重なお客様のニーズのデータとして活用しています。

PdMとPMMは蓄積された上記のデータをもとに、解約要因や運用課題、失注や受注要因分析にあたっています。データだけではお客様のニーズに関する解像度は高まらないので、商談への同席や、契約中のお客様へのインタビューも積極的に行っています。

お客様のニーズに関する解像度を高めたうえで、解決すべき課題を特定し、優先順位を付け、機能の要求仕様を策定して開発チームに連携していきます。下記を満たすような開発案件創出を目指しています。

・お客様の運用不満解消・利用満足度向上
・事業の単価向上・解約抑止
・開発チームへの品質と費用対効果の高い案件供給

顧客調査の目的・方法・役割分担

上記のような開発案件創出のためには、顧客の業務に対する解像度を高める必要があります。
顧客業務内のペイン、機能提供によって得られるゲイン、業務フローにおけるジャーニーを
理解したうえで要求仕様を策定することを目的として、顧客調査を実施しています。
代表的な方法としては、インタビュー、アンケート、お客様の実操作の見学が挙げられます。

実施にあたってはPdMとPMMが協力して下記のような項目を調査します。
特に顧客の「ペイン・ゲイン」に関する調査計画、分析、調整はPdMが担当します。

出典:「プロダクトマネジメントのすべて」p.52の記載を引用し、オレンジ色の枠は筆者追記

それぞれの項目に対してどのようなアジェンダで調査を行うかはフォーマット化されており、こちらの記事も参照ください。

楽楽精算PdM組織のミッション・ビジョン・業務内容
https://career-recruit.rakus.co.jp/stories/culture-029/

調査フロー

顧客調査は下記の通りのフローで進めています。

1. PdMが調査計画を立案
2. 計画を元にPMMと議論して、調査有無・手法を最終確定
  ・現在のVOCで十分な課題特定と解決策策定ができるか
3. インタビューやWEBアンケート調査実施の場合には、PdM主導で以下を策定
  ・具体的なヒアリングやアンケートの内容
  ・対象のお客様のセグメント(企業規模、業種等)
3.PMMと議論して、最終確定
4.PMMとPdMが協力して顧客へのアクション(インタビュー、WEBアンケート)を実施
5.ヒアリング結果等の調査結果を分析して、PdMでPRDを策定

顧客調査事例

PdMが実際に顧客調査に関わった機能の事例として、2024年2月にリリースされた「二重申請チェック機能」をご紹介します。
https://www.rakus.co.jp/news/2024/0219.html

機能の概要

経費申請業務では、同じ証憑を使って2回経費申請を行ってしまう「二重申請」のリスクがあります。これまで経理担当者は二重申請を目視で確認していたため、業務負荷がかかっていました。
この機能は、経理担当者が伝票データ出力を行う際に、複数項目が一致するデータを出力することで二重申請の疑いがある明細を表示します。したがって、経理担当者の目視確認の負担を減らすことが期待されます。

課題の背景

昨今の電子帳簿保存法の改正により証憑の電子化が進んだことから、申請者の手元に原本データが残り続けるため、申請済みの証憑を意図せず再度申請してしまうリスクが顕在化していました。

調査プロセスの概略

要求調査を行うことになりましたが、楽楽精算は16,000社もの顧客にご利用いただいていることから、まずは楽楽精算が最も貢献できると思われる顧客層を特定すべく絞り込みを進めていきました。

1.3C分析とSWOT分析

最初に行うのは3C(Customer、Competitor、Company)分析とSWOT分析です。
実際にお客様から頂いた要望や、世の中の電子帳簿保存法への対応状況や調査機関の発表などを参照し、経理担当者が実際に不正な経費申請のリスクを感じている=マーケットが存在することなどを確認していきました。

2.STP分析とペルソナ

業種や企業規模をもとに、S(セグメンテーション)、T(ターゲティング)、P(ポジショニング)分析を行います。ここから優先的に調査すべき企業像を割り出します。その企業に在籍していそうな経理担当者や承認者、経費申請する一般社員のペルソナを作成し、業務フローやチェックプロセスに関する仮説を立てました。ここで作成したペルソナや業務フローはインタビュー後に事実の情報に基づいてアップデートし、PRDの作成に利用します。

3.仮説ペイン・ゲイン

ペルソナが達成したいこと、手間に感じていることに対する仮説を立て、ペイン・ゲインにまとめます。一例としては、二重申請がなくなること、正しく承認できること、工数削減できること・・・等が挙げられます。

4.インタビュー

「1.」~「3.」で定義した仮説を検証していくような形で、PdMとPMMがターゲットとなる企業に近いお客様へのインタビューを行い仮説検証とともに解像度を高めていきました。業務フローにおける課題、二重申請の発生の実態や、仮説ペイン・ゲインが実際に存在するかどうかを確かめました。

5.PRD

インタビューから得られた顧客要求をまとめ、多くのお客様で共通する課題や業務へ与える影響が大きな課題などといった軸から優先度をつけ、PRDに落とし込んでいきます。
以降は開発チームにより要件定義のプロセスに進んでいきます。

以上概略のみではありますが、PdMによる顧客解像度を高める取り組み事例を紹介しました。顧客の課題解決に真につながる開発のため、PdMは積極的に顧客接点を持ち、ニーズの把握に取り組んでいきます。

Back to list