楽楽精算のPjMとPdMはどう連携しながらインボイス対応の機能開発を進めたのか

PROFILE

石井 慧(写真左) 紀井美里(写真右)

楽楽精算開発部

石井:大学卒業後、外食企業に入社。その後、IT業界に転職し、PG、SE、PL/PMとキャリアを重ねつつ、独立系SIer企業から事業会社、スタートアップから大手まで様々な企業で経験を積む。 2021年9月ラクスに入社。現在楽楽精算のPjM等を担当している。

紀井:新卒でエンジニア職としてプログラム未経験でラクスへ入社。 楽楽精算のシステム開発・運用のPGを3年経験。その後、ラクスベトナム立ち上げ直後からブリッジSEを3年経験し、さらに3年程の楽楽精算の国内開発のPMを経て、現在はPdMを担当している。

まず、今回リリースした機能の紹介をお願いいたします。

ここ1年ぐらいはインボイス対応をメインに行ってきました。
具体的には顧客が仕入税額控除を受けられるよう「適格請求書」(いわゆるインボイス)などの請求書等の保存を行い、仕入税額の計算が正しく行えるようにする対応です。それに伴うUI、UXおよび顧客の運用を加味した改修までが含まれます。

開発の背景を教えていただけますでしょうか。

インボイスは法要件となる為、対応を回避することはできない為、対応することとなりました。

ただしラクスではリーダーシッププリンシプルの一つとして「小さく試して大きく育てる」を掲げており、どのような機能にするかを検討する際に、根拠なく予想で計画を立てることはありません。あえて初期段階では最小限の機能開発に抑え、リリースされ運用された後に実際にどのように使われているのかを確認しながら徐々に機能拡充するようにしています。
そのため最初にどこまでの機能をつけるべきなのかはかなり頭を悩ませるものでした。この部分はプロダクトマネージャーの紀井さんが検討し、ビジネスサイドと調整を行っていきました。

楽楽精算はどのような開発体制で開発していますか? お二人の役割もあわせて教えてください。

まさに楽楽精算開発部に関係する方全員で取り組んできました。
エンジニアというと開発だけしている印象を持たれるかもしれませんが、CSや営業が窓口となってくださっている顧客からの質問への対応、障害対応などの運用業務も開発と同時に行わなければなりません。
とは言え、すべてをやりながら開発を完了できるボリュームではなかった為、一人1人が作業に集中できるよう、しっかりと役割分担を行い、インボイス対応を行う人がしっかりとその開発業務に集中できる体制を作りました。PMとしては紀井さんと石井の二人がいたのですが、それぞれ大きく分けると下記のように作業分担をしていました。

紀井さん:ビジネスサイドとの調整および仕様調整
石井:リソース、タスク調整

プロジェクトはどのように進行していくのでしょうか。

今回の対応はかなりのボリュームであったこともあり、要求定義をする際、かなりPdMとして紀井さんに入って頂きました。通常の案件でも要求の詳細な部分はPdMが中心となってまとめてくださり、事業部側と合意をとってくれています。

要求が固まった後は開発側で機能要求、UI/UX設計と進んでいき、そこまでは事業部に開発側の考えを説明することで、開発以外の視点からも問題がないかの確認をとります。その後は概要設計、開発と下流工程を進めていきます。

インボイスは多くの顧客に影響を与え、顧客の運用を変えてしまう可能性があったので、通常であれば下流工程が完了した後に実際に触れる環境を事業部にお渡しするのですが、今回はある程度開発が進む度に事業部に触れる環境をお渡し、想定していたものと認識齟齬がないかを細かく確認し合いました。
そういった細かい認識合わせがあったこともあり、開発完了からリリースまでスムーズに進めることができ、リリース後も多少のトラブルはありましたが顧客に大きく影響を与えるようなトラブルには至っていない状態です。

進めていくうえでの課題や、苦労されたことはありますか?

一番の課題は影響範囲の広さから来る開発難易度の高さでした。
楽楽精算は10年以上続くサービスの為、ソース量がとても多く、今回のように根幹部分に手をいれるような改修となってしまうとおのずと調査対象の範囲が広くなり、不具合も発生しやすくなってしまいます。その為、開発に必要な工数自体は大きくなってしまうのですが、過去経験したことのない作業ボリュームでした。

次が品質でした。先に述べたように影響範囲が広い為、開発中の不具合が通常より多くでてしまい、メンバーの稼働を圧迫する形となってしまいました。

それらの課題をどのように解決しましたか?

大きく2つの対応を行いました。

機能面とリソース面です。

・機能面(主に紀井さんが担当)

インボイス対応を一つの大きな塊として対応するのではなく、適切なボリュームに要求を分割し、開発チームに割り振ることで責任範囲を明確にし、改修する箇所が他のチームとバッティングしないようにしました。

・リソース面(主に石井が担当)

インボイスの機能開発担当となった方が業務に集中できるよう、他のタスクが舞い込まないよう部内に共通認識を持たせました。その上、インボイスの機能開発担当以外となった方で運用関連や不具合改修、改善作業などを行いました。

プロジェクトでうまくいったこととしては上記の対応もあり、開発期限内に開発を完了させることができたことだと考えています。開発面ではどうしても一部の方に負担はいってしまいましたが、直接開発にかかわっていない方も巻き込んで、期限内に開発を完了させなければならないことをinputできたことが大きかったのではと思います。

どんな機能をリリースできたか、主要なものをご紹介いただけますでしょうか

具体的には下記のような機能となります。先にお話したように顧客が仕入税額控除を受けられるよう「適格請求書」(いわゆるインボイス)などの請求書等の保存を行い、仕入税額の計算が正しく行えるようにする対応となります。

1. 適格請求書発行事業者番号 項目の追加(スマホにも対応)
2.「税額」項目の配置可能な申請種別の拡大(スマホにも対応)
3.「税額」を仕訳処理時に編集可能に
4.「振込元マスタ」に適格請求書発行事業者番号 登録可能に

ありがとうございました。最後に今回のインボイス対応を振り返っていかがでしょうか?

楽楽精算は日々改修される為、機能の拡充はもちろん、関係するメンバーの成長、新しい仲間が増えたりととりまく環境が日々変わっていっています。 その為、去年は正解だったものが今年はイマイチ、来年は不正解と変わっていってしまう可能性があります。その中で本質をとらえ、どのような取捨選択の判断を行い、皆の協力を仰ぎ成果を出していくのかがプロジェクトマネージャーの役割になって来るため、決して簡単な役割ではありませんが、やりがいはかなり大きいと考えています。

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