PROFILE
大群 裕太
2015年に総合商社の審査部に新卒で入社。与信・事業投資の財務審査、金融市場や地政学リスク分析などを担当。2019年、介護ITベンチャーに事業開発として転職。介護計画作成支援AIサービスの立ち上げを担当し、顧客の業務分析、システム要件定義、契約書や経理処理の構築などを経験。2021年4月にラクス入社。インボイス制度対応をはじめ『楽楽精算』の製品企画を担当後、現在は新サービス『楽楽請求』のPMMとして邁進している。
正しい仕事を正しく創れるようになりたい。上司との出会いも決め手になった
大群さんは、前職の介護ITベンチャーでもPMMの経験があったのですか?
事業開発という、恐らく近しいことをやっていました。PMM(プロダクトマーケティングマネージャー)という名前は知らなかったですね。
その時の痛い経験として、自分が担当していた製品が完成間近になって、それがとても顧客課題の解決につながるものではないことが分かってきました。ずっと顧客課題だと信じていたものが、実はそうではなかったのです。それでも資金調達の関係で無理矢理リリースするしかありませんでした。
業務システムを提供する事業者として、当然ですが商品がお客様の課題解決になるものになっていなければ売れませんしお客様の役に立てません。新規事業あるあるですが、「実はそんなニーズはなかった」が起きます。こうなるとお客様も営業もCSも開発も、全員が不幸になります。同僚が「こんなの正しくない」と感じながら仕事している状況が辛く、まず自分がまともな製品を創れるようになりたい、と強く思いました。自分は社会課題というより、「この仕事にはやる意義がある」と思っている仲間に囲まれて過ごすことに幸せを感じるのだな、と気づきました。
そう考えれば考えるほど、事業開発を担っていた自分が、まともな顧客課題の理解ができていなかったこと、それを解決できるソリューションを作り出せなかったことに口惜しさが募りました。自分に足りなかったのは、表面的ではなく深い面で顧客課題を探求し、顧客の業務を知り、製品に反映する力、そしてそれをお客様に適切に届ける力。ならばそこを突き詰めようと思い立ちました。PMMという名前を知ったのはそのあとです。
その舞台として選んだのがラクス。なぜラクスだったのですか?
会社のフェーズと過去の決算推移のすごさ、そして今の上司との出会いが大きかったです。上司との面接で率直に伝えたのは、社会課題の解決に強いこだわりがあるわけではなく、仲間とともに良い製品を作り、いい仕事の連鎖の結果としてお客様の助けになることを目指していること。上司は「いいねぇ!」と大きく頷いてくれました。
私の率直な思いを受け止めてくれて、価値観を共有できる上司がいることを知り、とても前向きな気持ちになれたことが入社の決め手になりました。
チーム総力で新制度に対応し、ラクスAwardを受賞
入社後は『楽楽精算』を担当し、現在は新規サービス『楽楽請求』のPMMを務めていますね。『楽楽精算』時代に印象的だったことは?
2023年10月から施行開始となったインボイス制度への対応です。
インボイス制度によって、インボイスを受領する側にはどんな対応が必要になるのか、『楽楽精算』でその業務はどうあるべきか、そもそも法律の解釈は合っているのか、など、限られた情報を精査しながら、エンジニア、営業、カスタマーサクセス、マーケティングの仲間と連携しながら、インボイス対応の業務フローやシステムや案内として対応しなければいけないことを具現化していきました。
できることは全てやったと思いますが、リリース時には正直不安もありました。しかし、想像を超えるほど大きな反響をいただき、新規契約数も伸び、売上拡大という目に見えた成果に結びついたのです。
2024年4月には社内表彰制度のラクスAward受賞にも輝きましたね。
ありがとうございます。ただ、受賞時は複雑な心境だったことも正直なところです。
確かに『楽楽精算』のインボイス対応について、誰よりも学習して法を読み解き、どうなればいいのか道筋を立て、成果をもたらした一端は自分にもあるという自負はあります。
ただ、私自身はシステムを作っていませんし売っていませんしサポートしていません。それは『楽楽精算』にかかわる仲間の知恵とスキルと圧倒的物量をこなす泥臭さを結集させた総力戦でした。代表して受賞したのはたまたま自分でしたが、文字通り関係者全員の成果です。ひいては、楽楽精算を通じたインボイス対応版の業務を社内に浸透させようと尽力してくださったお客様自身の成果です。
ユーザーの行動・心理を読み、新サービスの企画を具現化
ラクスAward受賞は、まさに全員が連動していった賜物。大群さんがPMMとしてやりたかったことを具現化できたエピソードだと感じました。この経験が、新サービス『楽楽請求』のPMM抜擢へつながっていくのですね。
『楽楽請求』は、請求書を受領する側の手続き業務を効率化するためのサービスです。その原型は『楽楽精算』のオプションサービスの一つにありましたが、単独でサービス化するということで、私に白羽の矢が立ちました。
まず取り組んだのは、『楽楽精算』の仕組みの前提を取っ払って、ゼロから請求書処理業務を整理し、人間の行動や気持ちについて仮説を立てることです。
どんな業種のどんな規模のどんな会社はどんな商売をしていて、取引先から紙やPDF等さまざまなフォーマットの請求書がどんなタイミングで誰に届いて、社内では誰から誰に何をきっかけに仕事が移るのか、何が何故大変で、どうなればいいのか。それに対して『楽楽請求』はどう応えるのか、競合はどうしているのか、と。
インボイス対応の際と同じく仮説と検証を繰り返し、開発メンバーとも意見を交わしながら、確度高く課題といえそうな業務の解決状態を具現化していきました。
その成果をどう捉えていますか?
まだまだ成果が生まれるのはこれからです。正直プレッシャーを感じながら販売開始を迎えたのですが、おかげさまですでに多くの商談依頼をいただいています。
競合のベンダー様が既に成果を上げられているように、請求書受領の処理に悩むユーザーが多く存在し、確からしいニーズの存在はやはり感じます。もちろん生まれたばかりの製品でありここから改善していくものですので、実際に商品に触れたお客様の声をもとにブラッシュアップしていきたいと意気込んでいます。
私たちは、何に対してお金を頂戴しているのか
「仮説」という言葉がよく登場しますが、仕事上のキーワードの一つですか?
はい、PMMにとって仮説思考は非常に重要だと考えていますし、それがPMMの面白さでもあります。
製品の企画を検討する際には、方々から集めた情報をもとに「こういう企業の場合ここでこういう理由で困っていて、こういう解決状態が望ましいのだろう」という仮説を立て、検証し、機能に落とし込んでいきます。その成果がユーザーからの評価や売上増加に結びつくと、自ら立てた仮説が現実世界とパチンと符合する感覚があります。その瞬間はとてもアドレナリンが出ますね。
では、仕事上で大事にしていることは?
「自分はお客様に、会社に、同僚に、飯を食わせて頂いている」という事実を忘れないこと、それに応えようとし続けることです。
大前提、お客様が一生懸命稼いだお金の一部を頂くわけです。もしかしたらお客様の従業員の賃金を上げることに使えたかもしれないお金を、です。その従業員は、自分の友達かもしれないし、誰かにとっての大切な人かもしれません。そこには人の暮らしと歴史があることを忘れてはいけないなと思います。そこに寄り添いながらお客様の課題を解決する一助となるプロであることに対し、私たちは対価を払われて、自分の生活を営むことができます。仕事はお客様のためにするのであり、自己成長のためにあるのではない、という価値観なのだと思います。
その大前提がまずあって、そのうえで仕事のやりがいや面白さ、仲間の存在などがアクセラレータとなり、結果としていつのまにか自分の成長にもなっている。そういうふうに考えています。
ラクスは未踏のフェーズへ。この経験は狙って得られない
ラクスという会社についてはどう捉えていますか?
入社前にラクスの過去の財務諸表に目を通したときから、審査部門での知見や何も上手くいかなかった前職の経験もあり、「これほどの継続的な成長を実現し続けるのは本当にすごいことだぞ…」と感じていました。その印象のとおり、当時から今に至るまで、ラクスはサービスを磨き続け、SaaS企業としてかつてない成長曲線を描いています。
今直面し始めているのは、国内SaaS企業として前例のない規模の未踏のフェーズ。このフェーズに至るにはどんな会社でもどうしても時間がかかりますし、会社の成長過程で必ず直面するものだと思っています。そのフェーズを国内SaaSの中で恐らく最も先取りで経験できるのは貴重な機会であり、ラクスの社員だからこその特権かなと思っています。
大群さん自身の今後についても聞かせてください。
人の役に立ついい仕事を生み出していきたいです。恐らく、名前としては事業責任者を目指しているのだと思います。
というのも、私が思うラクスの魅力のひとつに、「事業計画力」があります。どれくらいの売上計画とするか、売上目標の達成にはどんな戦略をとるべきか、どんな課題を解決するどんなプロダクトが必要なのかというように、PMMのプロダクト戦略はもとより、営業戦略など全ての戦略が事業計画に強烈に影響されます。その目標の加減と言いますか、ストレッチのかけ方がラクスは絶妙だと思います。目標自体は大変ですが、市場だけでなく競合の成長速度も織り込んだ計画にしないと、結局業界内地位は劣後し売上も減っていくので、結果としてお客様に貢献するための体力が減っていきますからね。
かといって、無理な計画からは、無理のある商品、無理のある案内、無理のある運用が生まれやすくなり、最終的にお客様にご迷惑がかかります。それでは関わる人員もお客様も不幸な仕事となりやすいです。「これはお客様のためにも事業のためにもなる。だからやる意義がある」と私たち自身が信じられる仕事を創りたいです。それはやはり「ちょうどいい事業の計画」と、計画から生まれる「芯を食ったいい仕事」を連鎖発生させることにつきます。
今の私はプロダクトの範囲内で活動していますが、こうした事業計画を策定するラクス上層部の合理的なマネジメントを学び取りながら、近い将来、自らが事業計画の立案とその実行責任を果たせる側に回りたいと思っています。
では最後に、PMMとして一緒に働きたい人を教えてください。
やはり仮説思考が好きな人、現状のHowを尊重しながらも「Why」が気になって仕方がない人にぜひ来ていただきたいですね。もちろん、仮説を立てる際にはビジネスになり得るのかを見極めることも重要。そうしたビジネス感覚を併せ持った人なら、ラクスのPMMを思う存分に楽しめるかと思います。
※所属・役職はインタビュー時点(2024年8月)のものです。