急成長サービスを効率的に運用する基盤仮想化の取り組み

PROFILE

藤井 靖弘

東京インフラ開発3課 課長

インターネットホスティング会社での構築・運用からキャリアをスタートし、カード決済インフラの構築・運用、金融システムの構築、保守等に携わる。開発、SI業務全般、営業やサポートも幅広く経験してきた。近年はSE業務に加えて管理・マネジメント業務にも取り組んでいる。

東京インフラ開発3課について教えてください。

販売管理システム「楽楽販売」と電子請求書発行システム「楽楽明細」、電子帳簿保存システム「楽楽電子保存」のインフラ基盤の設計、構築、運用を担っています。

これらのサービス基盤は、直近2年で物理サーバから仮想化されましたよね。どのような背景で仮想化に至ったのでしょうか。

これらのサービスはお客様導入件数が急成長しており、サーバ機材数上昇に伴う運用コストやデータセンター設備コストが年々増大してきました。

ラクスはオンプレミス中心でインフラを構築しており、当時は物理サーバで構成していました。一時期はサーバが最大800台稼働しているような状況に加え障害や新規調達の手続き、データセンターでの作業まですべて私たち自身で行っており、運用高効率化待ったなしとなったのが仮想化を検討するに至った背景です。

どのような仮想化基盤となったのか、概要を教えていただけますでしょうか。

ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)を導入することにしました。HCIは計算(サーバ)、ストレージ(ディスクストレージ)、ネットワーク機能を一つのシステムに統合し、これをソフトウェアで統合管理するものです。ノード単位でのリソース追加が可能になるため、従来の仮想化基盤における3層アーキテクチャ(個別にサーバ、ストレージ、ネットワーキング機器を配置する方法)より設定や運用、拡張が容易になるのが特長です。オンプレミスでもクラウドに近い効果が得られることになります。

急成長サービスとも親和性が高そうですね!どのように検討を進めたのでしょうか。

HCIは楽楽販売や楽楽明細のような急成長サービスとも親和性が高いアーキテクチャです。一方で、データベース処理の重いサービスはHCIに不向きともされ、性能面では懸念がありました。

一般的な理由としては、共有ストレージと比較するとHCIによる分散ストレージ性能が低いため、シビアな要件が設定されているDB処理では求められる性能が出せないという問題や仮想化に起因するCPU処理性能の劣化などがあります。
DISK I/Oレイテンシーを極力抑えるためにVMWare VSAN7から採用されたROCE v2というInfinibandをEthernetで実現する新技術を採用しました。更に劣化を抑えるためにVSANキャッシュにはNVMeも採用、レイテンシーの更なる低下だけではなく200万IOPSという高い性能を持ったシステム構築が出来ました。

運用を開始されてみて、どのような成果がありましたか?

既存のオンプレミスサーバ群を仮想化基盤に置き換えることができたので、大幅なコスト削減効果が得られました。楽楽販売のデータセンター費用としては、従来15ラック分のスペースを要している環境が、2ラックにまで収まるようになりました。スペースの費用だけでなく、電気料金など付帯するコストも下がりましたし、ファームウェアのアップデートなどの付帯作業も削減することができました。

それはすごい削減効果ですね!今後の展望についても教えていただけますか?

仮想化基盤の導入は軌道に乗ってきました。今後はコンテナ化の活用も進めるべく、Kubernetes基盤をベースにした環境も検討・推進し、より効率的な運用を実現していきたいですね。

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