インフラ開発部が実践する「クラウドネイティブ・オンプレミス」戦略


──昨今、「インフラはクラウド一択」という風潮がありますが、現状をどう見ていますか?

永易: ここ数年、クラウドは非常に強力な選択肢になっています。インフラを短時間で立ち上げられ、マネージドサービスによって多くの運用を自動化できるため、開発スピードを重視するプロジェクトでは非常に有効です。そのため、「まずクラウドから検討する」という流れが一般的になっているのは自然なことだと思います。

一方で、SaaSのように長期間サービスを運用し続ける事業では、コスト構造や性能、セキュリティ統制、運用の柔軟性などを総合的に考える必要があります。マネージドサービスは多くの運用を自動化してくれる一方で、内部構造の制御やチューニングの余地が限定されることもあり、すべてをクラウドに任せることが常に最適とは限りません。
また、インフラエンジニアの観点でも、インフラを単に「利用する」だけでなく、自分たちで設計し、改善していく力を持つことが、サービス品質や事業競争力を支える重要な要素になります。

そのため私たちは、「クラウドかオンプレミスか」という二択で考えるのではなく、クラウドネイティブの思想や技術をオンプレミスにも取り入れる『クラウドネイティブ・オンプレミス』というアプローチを採っています。これは、事業としての持続的な競争力と、エンジニアが成長し続けられる環境の両方を実現するための選択だと考えています。


──なぜ、あえて今「オンプレミス」を進化させているのでしょうか?

永易:創業以来、自社でインフラを保有・運用してきましたが、それは保守的なこだわりではなく、すべて「徹底した合理性」に基づいた判断です  。

SaaSビジネスにおいて、インフラコストは提供価格や利益率に直結する極めて重要な要素です。一定の規模を超えたビジネスでは、パブリッククラウドの従量課金が経営を圧迫する要因になり得る 。自分たちで最適な機材を調達し、運用成熟度を高めていく方が、コスト・性能ともに圧倒的に高い成果を出せます 。だからこそ、私たちは特定のインフラ環境に固執するのではなく、事業フェーズによって何が最適解かを見極める戦略を採っています。その時々のビジネス状況に最も合致した選択を自ら行えるよう、技術選択をベンダーに委ねず、自分たちの手の中に置き続けているのです 。


──「クラウドネイティブ・オンプレミス」の具体的な中身について教えてください。

永易: 簡単に言えば、「オンプレミスの堅牢な基盤の上に、クラウドの利便性を実装する」という戦略です 。

Kubernetesによるコンテナ基盤の構築はもちろん、IaC(Infrastructure as Code)による標準化、オブザーバビリティ(可観測性)を導入することで、システムの状態を継続的に把握しながら改善できる環境を整えています。これにより、クラウドと同様に自動化や再現性を重視したインフラ運用をオンプレミスでも実現できます。
また、私たちの特徴の一つは、OSSとベンダー製品をフラットに比較し、自分たちのサービス特性や運用要件に合わせて「合理的に技術を選択する」文化があることです 。移植性を前提にした設計を行っているため、特定の環境に縛られることもありません 。こうした基盤は、単一の製品で実現するものではなく、さまざまな技術を組み合わせながら自分たちで最適化していく必要があります。その過程で、インフラの原理原則や技術の背景を深く理解しながら設計・運用していく経験が得られます。

結果として、クラウドだけに依存するのではなく、オンプレミスも含めた幅広い技術を扱えるエンジニアの力が、長期的に事業を支える重要な基盤になると考えています。


──オンプレミスというと、運用が大変そうなイメージもありますが。

永易: 私たちは、安定稼働を「頑張る(気合い)」ではなく「設計」で実現するものだと定義しています 。

自動復旧や冗長化の仕組みをシステムそのものに組み込み、属人性を排除する 。さらに、定期的な復旧訓練やBCP対策を徹底することで、何かが起きても「想定内」として対処できる体制を整えています 。

サービス特性に応じたSLA(サービス品質保証)を自分たちで設計し、それに基づいた最適な投資を行う 。この「ビジネスと技術が地続きである感覚」は、ラクスならではの面白さかもしれません 。


──エンジニアの成長についてはどう考えていますか?

永易: 自動化によって定型的な運用業務を徹底的に排除することで、エンジニアが「次の設計」や「新しい技術の学習」に集中できる時間サイクルを生み出すことを目標としています 。

また、ラクスにはDev(開発)とOps(運用)が共通の指標で議論する文化が根付いています 。単に言われたものを作るのではなく、将来を見据えたAIOpsの導入や次世代基盤の構想など、常に挑戦的な課題が目の前にあります 。

「クラウドを使いこなすスキル」に加え、「クラウドと同等以上の環境を自ら設計・構築できるスキル」を兼ね備える。この希少な経験が、エンジニアとしての市場価値を何よりも高めてくれるはずです 。


──最後に、候補者の方へメッセージをお願いします。

永易: ラクスのインフラ開発組織が目指すのは、ビジネスの成長をインフラから牽引するプロフェッショナルなチームです 。

私たちは、変化を恐れず、技術を合理的に突き詰めたいという意志を持つ方を求めています 。既存の枠組みに沿って構築するだけの毎日に疑問を感じているなら、ぜひ当社を検討してほしいです。
あなたの設計力が、数千万人のユーザーを支えるサービスの屋台骨になります。インフラを「選び、設計する」醍醐味を、一緒に味わいましょう 。

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