INTERVIEW フロントオフィス向けサービスでもラクスグループのプレゼンスを高めていく

執行役員
ラクスクラウド事業本部 本部長
兼 )株式会社ラクスライトクラウド 代表取締役

浅野 史彦

PROFILE

建築業界からIT業界に転身し、2000年11月に株式会社アイティーブースト(現在の株式会社ラクス)の創業メンバーとして参画。エンジニア教育事業、インフラやカスタマーサポート(現在のカスタマーサクセス)部門の統括、子会社社長などを歴任後、現在はラクスクラウド事業本部長と子会社である株式会社ラクスライトクラウドの代表取締役を兼任する。

フロントオフィス領域のクラウドサービスを扱うラクスクラウド事業本部

ラクスでは製品群別に事業本部を編成し、楽楽クラウド事業本部ではバックオフィス向けの楽楽シリーズを、ラクスクラウド事業本部ではフロントオフィス向けクラウドサービスを統括しています。加えて、ラクス100%子会社のラクスライトクラウドでは、シンプルで低価格のメール配信サービスを手掛けています。

ラクスクラウド事業本部の主力サービスは、メール対応管理システム『メールディーラー』と、メール配信システム『配配メール』です。『メールディーラー』はラクス初のクラウドサービスとして2001年4月に、『配配メール』は第2弾として2007年5月にそれぞれ販売を開始し、長年にわたってラクスの発展に寄与し、多くのお客様にご利用いただいてきました。メール対応やメールマーケティングの効率化を通して企業の成長に貢献し、それぞれトップクラスのシェアを獲得しています。

そして、これらのサービスはリリースから20年程度が経過し、成熟期にさしかかっています。そのため、市場としては急拡大するようなフェーズではありませんが、比較的継続的に成長している状況でメール配信で7%、メール処理で13%が市場成長の予測値となっています。そんな中でラクスのサービスは、市場を大きく上回る数値を出しています。

成熟期サービスとしての現状を打開してその先へ

市場の競争環境は比較的穏やかであるため、利益率としては高く出せる環境とも言えます。
そのため、ラクスクラウド事業本部の「現状」は利益額をきっちりと大きく育てていくような位置づけと認識はしています。数値的には利益率50%を超えながら、2桁の売上成長を長期にわたって継続していくことが必要な領域と考えています。

ただ、特にメール配信領域においてはここ数年U/E(ユニットエコノミクス)が2.5程度と3を下回っており、投資効率が悪化していたので、売上成長への投資を控える選択肢もあったのですが、業務効率を高め数値改善に取り組むことで、2023年度でようやく3を超え、2024度は3後半程度の数値が出せる見込みとなりました。

また売上についても順調に成長し担当サービスの合算で60億円弱(5,881百万円)の売上高、50%超の利益率となる31億円の営業利益を出せている状況です。

現行期(〜2026年3月)においては、引き続き、さらに業務効率をあげ数値改善していくことが優先テーマです。ただ、同時にどうやって成長を長期継続していくのかを考えていかないといけない。今いる市場は急激には伸びないが幸いにも安定的で継続的成長は見込めるものの、それでも市場成長率を超え2桁の「率」成長を長期間続けるのは難しくはなってきます。 

そのため、現在の市場の周辺市場への展開を模索し、フロントオフィス領域で売上成長を長期的に継続できる道筋をつくろうとしています。現市場できっちりと拡販しつつ、未来に向けた展開の両方を進めていく必要があります。

シンプルなサービスを低価格で提供するラクスライトクラウド

ラクスの100%子会社である株式会社ラクスライトクラウドは、2018年2月にブレイン株式会社からブレインメール事業を買収してできた会社です。ブレインメール(買収後『ブラストメール』に名称変更)は月額2000円からの低価格サービスなので、ラクス本体のように1つ1つの案件のために営業人員を厚く配置してサービスを拡販することはコスト的に難しい難しい状況でした。そのため、主にマーケティングやプロモーションの領域を工夫して集客し、お客様自身がWeb上でトライアルや本登録の申し込みを行っていただくセルフサーブ方式を取っていました。

さらに、ブレインメールは『配配メール』と同じメール配信市場のサービスであり、競合として常に意識していたサービスでした。通数単価が低いことがあり、『配配メール』がバッティングした場合に値引き対応をすることも発生していましたが、ラクスグループの傘下になることで不要な価格競争をなくし、『配配メール』との住み分け、連携を進めることで、『配配メール』も『ブラストメール』もそこから大きく成長させることができています。

『ブラストメール』はメール配信に「必要」な機能を絞り込むことでシンプルにし、初心者でも迷いなく使い始めることができる低価格なメール配信サービスです。中小企業でメール配信施策をスモールスタートしようとするケースや、配信対象が百万を超えて大規模に配信するtoC向けのサービスで通数単価を押さえたいケースなど幅広くご利用いただいており、14年連続で顧客導入数シェアNO.1を獲得しています(ミックITリポート2024年7月号より)。

また、『ブラストメール』の強みとして高速配信エンジンを独自開発しているため大量配信に強いことも挙げられます。その配信エンジンを『ブラストエンジン』というサービスとして販売しています。SMTP・API連携によってお客様のシステムに組み込んでいただく、主に開発エンジニアに向けたサービスです。単純にメールを送る機能だけなら開発するのは難しくはないのですが、メールを確実に届けるための運用管理は意外と面倒です。特に一斉配信の量が大きくなってくると、より顕著になってきます。

メールは極めて広く使われているため、逆にメール受信側の挙動の「クセ」がそれぞれ違います。受信環境に応じた配信スピードのチューニングをしないと配信がブロックされることもありますし、SPAMと誤検知された場合などは解除申請や交渉をしなければならないケースもあったりと、メールの世界独特のノウハウが必要になってきます。このため、開発エンジニアはメール運用にあまり関わりたがらないことが多く、専門のサービスを利用する傾向が強まっています。その結果、『ブラストエンジン』への引き合いも増加しています。

なお、『ブラストメール』も『ブラストエンジン』も最近は大型配信案件の獲得量を増加すべく、きっちりと営業や受注後の配信コンサルができるような人員を配置することを進めています。

自分の判断を大切にし、仕事を楽しんでほしい

ラクスでは組織拡大の中でも組織のベクトルを揃えられるようにユニークネスやリーダーシッププリンシプル(以下、RLP)など大切にしてもらいたいことが言語化されています。その中で私が以前から自身が特に大事にしているのは、ラクスのユニークネスとしてあげられている「ゴールオリエンティッド」「着実な継続」、そしてラクスのリーダーが持つべきマインドであり、行動指針にあたるRLP「自分自身の会社だと思う」です。

「ゴールオリエンテッド」とは、何事にもゴールを設定し、その達成のために着実に行動するということです。手段を目的化するのではなく、何のためにそうするのか、なぜこの目標を設定したのか、すべてにおいて先にあるゴールを意識し、そこに向かって進んでいくということです。そうすることで、ゴールに向かって進む角度がずれず、最短距離にて達成に近づくことができると思っています。

また「着実な継続」という言葉には、 PDCAを回し、同じ失敗を繰り返さず、成功事象の再現性を高めて、小さくても少しずつでも良いので改善を積み重ねていくことです。

事業を成長させるためにPDCAを徹底的に回し続けることは非常に重要で、その積み重ねがサービスとして大きな差になってきます。特にSaaSは売り切りではなく、継続的に利用していただくためのサービスなので、製品をつくるための開発組織や、カスタマーサクセスを含めた付帯サービスなど全ての積み重ねが品質の差を生み出していきます。

最後にRLPの第一項「自分自身の会社だと思う」という言葉は、仕事をする上で非常に重要なスタンスだと思います。「自分ごと」として考えないと、インプットしたときの吸収率も大きく異なりますし、創意工夫も生まれづらくなり、リスク回避も中途半端になります。しっかり考え、判断する機会も減るので成長も止まってしまい、そもそも仕事を楽しめない状況になります。

そのため私が意識してきたのは、「自分で判断する状況をつくる」ことです。

メンバーに対して一人ひとりの現在の能力に応じた裁量を与えた上で、視点が足りない場合や方向性がずれている場合はコーチングによって自分で気付いてもらう。「自分ごと」として考えてもらうことを前提とし、判断を積み重ねてもらうことで成長が加速し、仕事自体を楽しめるようになれればと考えています。

これ以外にもラクスの企業文化や価値観は明文化されていますので、ぜひ共感していただける人に一緒に働いてほしいですね。

※所属・役職はインタビュー時点(2024年8月)のものです。

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