PROFILE
藤掛治 開発本部 楽楽自動応対開発課
中井宏樹 開発本部 楽楽自動応対開発課 課長
開発組織として、私たちは「顧客志向」を大切にしています。
一方で、実際の開発現場では、納期、品質、コスト、実装のしやすさ、目の前の要望など、複数の要素を同時に考えながら判断しなければならない場面が日常的にあります。
そうした中で、私たちが大切にしているのが、「顧客にとってどうか」を判断基準に置くことです。
ここでは、楽楽自動応対の開発チームの取り組みを通して、顧客志向をどのように日々の判断に落とし込み、チームや組織に根づかせようとしているのかをご紹介します。

藤掛治(開発本部 楽楽自動応対開発課)
顧客志向は「正解」ではなく「判断基準」
藤掛 治さんに聞く、開発の現場で大切にしていること
開発メンバーの藤掛 治さんは、かつて「顧客志向」という言葉に少し距離を感じていたと言います。
開発者は、顧客と直接会話する機会が多いとは限りません。
そのため、「顧客志向を持つ」と言われても、具体的に何をすればよいのかイメージしづらいことがあります。
しかし、経験を重ねる中で、藤掛さんは顧客志向を「特別な行動」ではなく、「判断するときにどの視点を基準に置くか」ということだと捉えるようになりました。
たとえば、開発の途中で次のように問い直します。
「初めて使う人にとって、本当に分かりやすいだろうか」
「自分がユーザーだったら、ここでストレスを感じないだろうか」
実装のしやすさやスケジュールなど、作り手側の事情に判断が寄りそうになったときこそ、顧客志向は、その判断が本当に妥当かを見直すための基準になります。
顧客志向とは、判断を止めることでも、慎重になりすぎることでもありません。
判断の前提を、顧客に置き直すことだと、藤掛さんは考えています。
「正しい判断」が、顧客にとっての最適解とは限らない
この考え方の背景には、藤掛さんにとって対照的な二つの経験がありました。
一つは、営業担当とともに顧客を訪問したときのことです。
自身が担当した機能について説明した際に、顧客から前向きな言葉をもらい、自分の仕事が実際に価値につながっていることを実感できたそうです。
もう一つは、導入初期に発生した課題対応の経験です。
ある顧客から、期待どおりに利用できないという厳しいご意見をいただいたことがありました。
調査を進める中で、利用環境に起因する可能性が高いことが分かりました。
当初は、提供範囲の観点から切り分けて考えることもできましたが、上司から返ってきたのは、次のような言葉でした。
「最終的に使っていただくことが大前提。支援できることがあるなら、できる限り向き合おう」
この経験を通じて、藤掛さんは「判断としては正しく見えても、顧客にとっての最適解とは限らない」と実感したと言います。
結果として課題は解消され、その後の継続利用にもつながりました。
この出来事は、藤掛さんにとって判断基準そのものを見直すきっかけになりました。
個別要望と、プロダクト全体の価値を切り分けて考える
顧客志向は、「顧客の要望をすべてそのまま受け入れること」と誤解されることがあります。
しかし、私たちはそうは考えていません。
個別の強い要望すべてに応えることが、必ずしも顧客志向とは限らないからです。
特定の顧客への対応に時間やリソースをかけすぎれば、他の多くの顧客や、プロダクト全体の価値に影響が及ぶこともあります。
だからこそ、目の前の要望だけでなく、より多くの顧客にとって価値があるか、プロダクト全体としてあるべき姿に沿っているかという観点で判断することが重要です。
顧客志向とは、個別の声に引きずられることではなく、全体として顧客にとってどうかを見極めるための判断基準でもあります。
顧客の生の声が、判断の質を高める
最近、藤掛さんが特に力を入れている取り組みの一つが、AIを活用した問い合わせ対応機能に関する顧客ヒアリングです。
複数の顧客との対話を通じて、問い合わせには大きく二つの種類があることが見えてきました。
一つは、FAQのように定型的に返答できるもの。
もう一つは、顧客ごとの状況や情報を踏まえなければ適切に返答できないものです。
この違いを理解したことで、「どこに価値があるのか」「どこを目指すべきか」という判断の精度が上がったといいます。
顧客志向は、気持ちの持ち方だけで実現できるものではありません。
顧客理解を深め、判断に使える材料を増やすことが、よりよい意思決定につながります。
顧客と向き合う周辺の職種を知ることも、顧客理解につながる
藤掛さんは、営業、カスタマーサクセス、企画など、他職種との交流の場にも積極的に参加しています。
その中で見えてきたのは、顧客と向き合う現場の解像度です。
営業やカスタマーサクセスが、顧客課題の解決に向けて日々丁寧に向き合っていることを知ることで、開発の判断にも背景情報が加わるようになりました。
また、日頃から職種を越えてコミュニケーションを取れる関係性があることで、相談や連携もスムーズになります。
顧客志向とは、顧客だけを見ることではありません。
顧客と向き合う人たちを理解することもまた、顧客によりよい価値を届けるために重要だと、藤掛さんは考えています。

中井宏樹(開発本部 楽楽自動応対開発課 課長)
顧客志向を一部のメンバーだけに依存させない
中井 宏樹さんが考える、チームとしての顧客志向
こうした判断が、一部の経験者だけのものになってしまっては、チームとして持続しません。
チームマネージャーの中井 宏樹さんが強く意識しているのは、顧客志向を個人の資質や意識だけに委ねないことです。
中井さんは、次のように話します。
「顧客志向は、開発者として価値を届けるための土台になるものです。
単に仕様どおりに実装するだけでなく、顧客にとっての価値につなげるところまで考えることに、開発者の役割があると考えています」
一方で、チームとしてはまだ発展途上でもあります。
顧客志向を自然に実践できているメンバーがいる一方で、役割や経験によっては、その重要性や具体的な実践方法をまだ十分にイメージしきれていない場合もあります。
だからこそ、中井さんは、個人の意識に頼るのではなく、チームとして支える仕組みづくりが必要だと考えています。
顧客に触れる機会を増やすことが、顧客志向を育てる
中井さんがチームで重視しているのは、顧客の生の声に触れる機会を増やすことです。
具体的には、次のような取り組みを進めています。
・顧客インタビューに開発メンバーも同席する
・営業やカスタマーサクセスから顧客の反応を共有してもらう
・プロダクトマネージャーを通じて、要求や背景をチーム全体で確認する
・事業部門と開発部門の交流機会を設け、職種横断のコミュニケーションを促進する
いずれも特別な施策ではありませんが、顧客の状況を理解する機会として、着実に続けていきたい取り組みです。
小さな変化の積み重ねが、チームの判断を変えていく
こうした取り組みを重ねる中で、チームには少しずつ変化が生まれています。
営業から開発に、顧客の相談内容が直接共有される場面が出てきたことも、その一つです。
これは、職種を越えた信頼関係が生まれ、部門間の距離が縮まってきたことの表れだと、中井さんは捉えています。
また、顧客インタビューに同席したメンバーからは、顧客が実際にどのように運用しているのか、どこで困っているのかといった、仕様書だけでは見えにくい情報が共有されるようになってきました。
さらに、要求仕様やその背景をチーム全体で読む文化が育ってきたことで、仕様の背景、顧客課題、事業側の意図といった前提情報をそろえた上で議論しやすくなっています。
こうした変化はまだ大きなものではないかもしれません。
それでも、日々の判断の質を高める確かな土台になっていると感じています。
ありたい姿を共有し、顧客志向を実践し続ける
今後さらに強化したいと考えているのが、リリースした機能がどのように使われているかを定量的に把握し、チーム内で共有することです。
自分たちが作った機能の利用状況や反応を共有できれば、顧客理解はより具体的になり、判断軸もさらに育てやすくなります。
その先に中井さんが目指しているのは、顧客志向を実践した先にあるチームのありたい姿を、より明確に言語化していくことです。
顧客インタビューや情報共有といった取り組みを単発で終わらせず、チームのビジョンや開発者としての役割と結びつけていくことで、チーム全体が同じ方向を向いて進みやすくなると考えています。
おわりに
楽楽自動応対の開発チームが実践している顧客志向とは、迷ったときに「顧客にとってどうか」を判断基準に置くことです。
納期や実装のしやすさなど、複数の選択肢の間で迷う場面は、どの開発チームにもあります。
そのとき、最後に立ち戻る基準をどこに置くのか。
私たちは、そこに顧客を置くことを大切にしています。
顧客志向は、特別なスキルではありません。
日々の判断の中で、顧客にとっての価値を問い直し続けることです。
この記事が、当社の開発における考え方や、顧客志向を大切にする姿勢についての理解の一助となれば幸いです。
